<近未来通信>破綻3年 社長の行方、依然不明
11月15日2時30分配信 毎日新聞
「年金代わりにと欲を出したのがいけなかったのか」。埼玉県狭山市の自営業の男性(62)は、紙切れと化した契約書を前に肩を落とす。04年秋、新聞広告で「IP電話サービス」を知った。ネットと電話回線をつなぐ中継サーバーの設置に出資すれば、通話料を配当に回すという触れ込みに心をひかれた。
説明会で「配当は月数十万円。2年で元が取れる」と聞かされた。案内された同社本社内の「中継局」にはビデオデッキぐらいの大きさのサーバーが並び、赤と緑のランプが点滅していた。「時代の波に乗っている」。05年3月、迷わずに1100万円を投資した。
順調だった配当が止まったのは06年9月。本社に行って社員に詰め寄ったが、「後日、説明会を開く」と追い返された。同11月20日には、本社や支店が一斉に閉鎖され、電話もつながらなくなった。受け取った配当は約200万円だけだ。老後を支えるはずだった約900万円が泡と消えた。
男性は「いまさら金が戻ってくるとは思わないが、早く石井社長や元幹部らを逮捕してほしい」と訴える。
総務省の立ち入り検査で、同社が国内外に2466台あるとしていたサーバーは7台しか稼働しておらず、05年7月期の売上高181億円のうち、「本業」の通話料収入はわずか約3億円だったことが判明。急成長の実態は、投資家から集めた資金を配当に回す「自転車操業」だった。
警視庁は06年12月、本社などを家宅捜索したが、石井容疑者は同11月に既に出国し、預金口座には数百円しか残っていなかった。警視庁は、投資家から同4月、サーバー購入名目で約2000万円を出資させ、だまし取ったとして、詐欺容疑で石井容疑者の逮捕状を取り、国際刑事警察機構(ICPO)を通じ国際手配した。石井容疑者は中国に滞在していたとされるが、行方は分かっていない。
破産管財人によると、負債総額約190億円に対し、回収できた資産は約2億1000万円。管財人は「債権者は増える一方で、配当のめどは全く立っていない」と話す。被害対策弁護団は「刑事責任が明らかになれば国から税金が還付され、救済に充てることも可能」と捜査の進展に期待を寄せている。
【ことば】近未来通信
97年12月設立。当初は宝石や毛皮を販売していたが、98年3月にIP電話のプリペイドカードの販売を開始し、02年12月にはテレビ付きIP電話機を売り出した。事業に投資して電話中継局のオーナーになれば配当金を支払うと宣伝し、出資を募った。06年7月期の売上高は98年7月期の約35倍に上る245億円としていたが、東京地裁は06年12月、破産手続きの開始を決定した。
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